ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 夕方になって、所長が控え室に戻って来た。

「やあみんな、ただいま~」

と鞄を傍の机の上に置いた所長が、僕を見つけてアレッと声を上げた。

「どうしたんだい?何かあったのかい?」

と尋ねながら寄って来る所長。どうやら朝からの騒ぎを知らないらしい。

「あったからここにいるんですよ。朝から僕らの所にマスコミとヤジ馬が押し寄せて来たんで、逃げて来たんです」

と頭を振ると、所長が目をパチクリさせた。

「マスコミとヤジ馬が、そんなにたくさん?」

と両腕を広げる所長。

「ええ。ドッと押し寄せて来るぐらい」

と両手で押し戻す仕草をしてみせると、所長がニッと笑みをこぼした。

「そうかぁ。ウンウン、これはミライの方が人気が出そうだね」

って所長、何ヒトゴトみたいに喜んでるんですか。

「勘弁してくださいよ、疑惑の矢面に立つ僕の身にもなってくださいって」

実験どころじゃないんですから。と所長が頷きながら答えた。

「ゴメンゴメン。でもそんなに騒ぎになるんなら、何か手を打たないといけないね。考えとくからさ、とりあえず暫らくはミライはここに置いといてよ」

そうですね。その方が安全かも。

「あっ、何だったら君も泊まってくかい?明日はここから大学に通えばいいんだし、その方がきっと静かに眠れるよ」

なるほど、朝が早くなるけど通えない事はないし、マンションを取り囲まれて騒ぎになる事もない。

「仮眠室に布団はあるからさ」

と手を腰に当てる所長。と、奥から広海君が身を乗り出して声を上げた。