ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 研究所には変わらずマスコミが人だかりを作っていた。その日は裏の駐車場にも待ち構えていて、バーを潜ろうとする僅かな時間にも容赦なくインタビューの魔の手が伸びてきた。

「所長が書類送検されましたがどう思われますか!」

幾つもの質問が飛び交う中、その言葉が耳に響いた。

(所長が書類送検された?…)

呟きながら裏口に駆けつけ、本田君に開けてもらって中に入った。

「所長が書類送検されたって?」

すぐさま問い質すと、本田君が頷き返してきた。

「そうなんです。実験中の職員の安全管理を怠ったっていう、業務上過失致傷の罪だそうです」

と首を竦めてみせる本田君。

「そうか…」

所長がしっかり監督していれば事故は防げたってトコロを咎めた訳か。所長も頭が痛い事だろう。

「ところで先生、今日はどうしてここへ?」

と本田君が小首を傾げて聞いてきた。

「いや、ミライの正体がバレたらしくて、大学の実験室に学生が群がって来てさ、身動き取れなくなりそうだから逃げて来たんだよ」

あのまま居たらトイレにも行けなくなる。と本田君がフゥと溜息をついて返してきた。

「そうですか…。ひょっとして自宅の方にもマスコミが来ませんでしたか?」

と聞いてくる本田君。

「…ああ、来てたんだよ、輪になって」

なぜわかったんだい本田君?と、本田君が大きな溜息を返してきた。