ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「突然ご免なさいね子供たちまで連れて来ちゃって。ご迷惑かしら?」

と済まなそうに微笑む奥さん。

「いえいえ、トンでもないですよ」

こんな訪問なら大歓迎です。

「今日はね、あなたの顔を見に来たのよ」

と微笑む奥さん。

「え?」

僕の顔を?どうしてまた?

「ほら、あんな事があってあなたが落ち込んでるんじゃないかって。主人も気に掛けていたわ」

「所長が?」

驚いた。所長が僕の事まで心配してくれていたなんて。

「ほら、あなたが落ち込むとミライさんまで落ち込んじゃうでしょ。今度の事を気にし過ぎて、大切な笑顔まで失ったりしないようにって」

なんだ、結局はミライなんですか…。

「男の人でも笑顔は大事よ。笑顔はココロの一番の栄養剤なんだから」

と奥さんが微笑んで後ろを振り返った。

「ほーら愛、舞、おじちゃんにもふたりでご挨拶してあげて。きっと喜んでくれるわよ~」

と奥さんの呼び掛けに、二人がダダーッと駆け寄ってきた。

「おじちゃんこんにちはー」

確かに、笑顔は心のビタミンかも知れない。

「こんにちは」

自然と笑顔になるのが自分でもわかる。

「良かったら、しばらくここにいてもいいかしら?」

「ええ、どうぞどうぞ」

その日は一日、実験室に幾つもの笑顔が溢れていた。