ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「…」

シーンと静まり返った研究室。研究員たちも輪を解いてあちこちにバラけてしまった。

「二号機ペアは早々と戦線離脱か…」

クワンとロイを揃って失うなんて、研究所にとっては大きな痛手に違いない。

「だからこのふたりを一緒にするのは反対だったんですよ」

とロイの傍にしゃがみ込む本田君。

「反対してたんだ、本田君は」

問い掛けると本田君が頷いて返してきた。

「初めから嫌だったんです。二人の姿を見て益々そう思いましたよ。クワンのロイへの入れ込みようは尋常じゃなかった…。僕は怖かったんです」

「えっ?」

怖かったって?

「クワンがロイにのめり込む、その気持ちに答えようとロイが全身全霊をクワンに奉げる、そんなロイにますますクワンが心奪われる…。そのままクワンとロイが、戻って来れなくなる所まで行ってしまうんじゃないかって、そんな嫌な予感がしてたんです」

思い返せばクワンとロイのいちゃつき様は、人とロボットの関係とは思えなかった。と本田君が首を振って続けた。

「昨日クワンの病室で、いくら呼びかけても反応しないクワンを目の前にして、ロイが愕然としたように膝から崩れ落ちたんです。本当に人間のように。まるで愛する人を失った男の姿そのままに。その落ち込み様を見て思いました。ロイのココロは、本当にクワンの事を一途に想っていたんだなって」

と本田君が一つ大きく息を吐いた。

「ロイは、自分からクワンを追いかけて行ったのかもしれません…」

なるほど。クワンを想うばかりに、か。

(そこまで想うココロが、ロイにはあったって事か)

と、本田君が一度宙を見上げてガックリと顔を伏せ、呟くように言葉を続けた。