ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「他に、何かやり様はないんですか?」

このまま見ているだけじゃ、どうしようもないですよ。

「…やるとするならバラすしかないけど、データのプロテクトが何重にも掛かってるし、ロイ自身がデータを保存フォルダに移動してない可能性もある。そうなると断片化したデータを解析するのは一苦労だよ。その後は初期化してまたゼロからのスタートになるし…」

と溜息をつく所長。でも、それしか方法がないならやるしか。

「それに、ヘタに手を出してデータが消えたら、証拠隠滅したんじゃないかって疑われるからね」

と首を振る所長。そうかぁ。それは嫌だな。

(変に疑われるのは癪だし)

と、所長が寝台に両手をついてフ~ッと息を吐いた後、スッと顔を上げた。

「…状況は芳しくない。ロイの問題は解決の目途が立たないし、クワンの意識が戻る見込みも依然としてない。だけど、ここで立ち止まってはいられない。ボクらには、まだやるべき事がある」

と立ち上がった所長が、こっちを振り向いた。

「こんな時こそ前を向いて、自分に出来る事を考えよう」

と言い終えた所長が、一呼吸置いてみんなを見回した。

「いろいろと考えないといけない事があるんだ。本田君、ここは君に任せるから後は頼むよ」

と所長が本田君の肩を叩いて、ゆっくりした足取りで研究室を出て行った。