ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「まず管理者がクワンである以上、クワンが快復しない限り言う事は聞いてくれませんよ。無理にアクセスしようとすればデータが消去されます。プロテクトは『万全』です」

と変に胸を張る本田君。彼がそこまで言うんだから、そうなんだろう。

(つまりは、管理者しか手は出せない…)

という事は、

「所長、管理者の言う事しか聞かないなら、管理者をクワン以外に変えたらどうなんですか?」

管理者を変えればあとは何とか手を打てるんじゃ?

「出来ないよ」

と目を閉じて首を振る所長。

「どうしてですか?」

聞き返すと所長がスッとしゃがみ込んで、ロイの手をそっと労わるように握り締めた。

「管理者を変更しようと思ったら、やっぱりセーフモードで再起動するしかないんだ。そのためには、ロイの目にクワンの瞳を認識させて、クワンの声で命令する必要がある。だから、やるとするなら、動かなくなったロイを病院まで担いで行って、意識不明のままのクワンの身体を起こしてロイと見つめ合わせて、横から合成音声か何かで、こう命令するしかないんだ」

と、所長が宙を見上げて続けた。

「管理者を変えなさいって。私の事は忘れなさいって。もう私とあなたは何でもないのよって…」

光景を想像するとなんだかせつなくなってきた。

「寂しい話ですね」

ロボット相手とはいえ、所長の言葉は悲しく耳に響いてくる。