ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「行けばわかります。待ってますから行きましょう」

と歩いていく本田君の後に続いて研究室へ入った。研究室の広い空間の中では、所長を始め研究員たちが輪になって、なにやら深刻に考え込んでいた。

「所長、大変な事になってるじゃないですか」

声を掛けながら所長に歩み寄った。

「あ、ウン」

気づいた所長が振り返ってきた。

「大変だよ…」

こんなに意気消沈した所長は初めて見た。

「そうですよね。…選りによって、ロイに運転させて事故っちゃって、クワンが意識不明になるなんて」

きっとクワンが飲んでたからロイに運転を任せたんだろうけど。幾らなんでも無茶だよ。

「挙句に、全部マスコミにバレちゃって」

と声を掛けた途端、所長がクッと振り向いてきた。

「そんな事はどうでもいいんだ!」

と今までに無い厳しい表情の所長。

「えっ…」

驚いて返すと、所長がフーッと肩で息を吐いた。

「ロイが動かなくなった方が問題だよ」

と輪になった研究員たちの真ん中に、ロイが寝台の上で静かに横たわっていた。