ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「バレるなんて、ボクは思ってないよ」

と、まじまじと見つめてくる所長。そう来ますか。

「いやでも、嘘をつき続けるのが正直、」

ちょっと辛くなって来たんですけど。と、所長がグッと身を乗り出してきた。

「何言ってるんだい、嘘をついてるんじゃないよ。条件付けをしてるんだよ。人が隣にいる存在を人じゃないと疑う時はどんな時か、そんな歴史上たった一度きりの貴重かつ重要な実験の条件付けをね」

と所長が指を立ててジッと僕の目を見た。

「ほかの誰でもない、君に任された、いや、君に託された唯一無二のこの実験を、みすみす自分から壊してしまうつもりかい?」

いえ、と気が付いたら首を振っていた。

(この人の『人の煽て方』のウマさは神業だナ)

思わずノセられちゃうよ。

「まぁボクはね、バレる事なく無事にこの実験が終わるんだって自信があるけどね。とにかくさ、ミライたちが戻ってくるのをゆっくり待とうよ」

とニッコリと背凭れに身体を預けてカップを口に運ぶ所長。

「わかりました。待ってますよ」

と頷いて返して、ミライと広海君が戻ってくるのを静かに待った。