ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 研究室の扉を開けて入った途端、まるで昼間のように慌ただしく飛び交っている声に驚いた。

(ん?)

ただその賑やかさの中心は二号機が横たわる寝台の方だった。

(…おっ、いるいる)

ミライが変わらず固まった姿勢のまま一人で台座の上に立っていた。耳からケーブルも外されて今にも動き出しそうだ。すぐ傍には見守るように所長が立っている。

「所長!」

と呼び掛けながら駆け寄った。

「やぁ、待ってたよ」

とパッと笑顔で振り向く所長。

「ずいぶん賑わってますね」

問い掛けると所長の笑みが大きくなった。

「ロイのセッティングが大詰めだからね」

「ロイ?」

初めて聞く名前ですけど。

「二号機の名前さ。クワンが名付けたんだ。彼女が管理者だからね」

「へえ、じゃあいよいよ二号機も動き出すんですか!」

感じるココロが完成したミライに続いて、二号機までもが動き出そうとしている。ここも押すな押すなの大賑わいだ。

「その二号機もクワンと一緒に暮らすワケですか?」

僕とミライみたいに。

「そう。ただロイはここでクワンを管理者にして、閉じた環境の中で実験を行うんだ。外へ出すのは大変なんだって、君を見ててつくづく思ったよ」

と所長。そうですか。ようやく僕の苦労をわかってくれましたか。

「オープンな環境のミライと、閉じた環境のロイ。ココロの『トリガー』となるプログラムをソフトで追加したミライと、ハードで組み込んだロイ。いい比較対照実験になるはずさ」

とらしいセリフを並べた所長が、ミライを振り返って言葉を続けた。