よく廊下に響く声。その名前に反応して前を向いた先に、彼の背中があった。

 ダイという彼の友達が呼ぶ声は聞こえているはずだけれど、廊下を進んでいってしまう。それはまるで……

「避けられてる?」

「え? ハスミちゃん?」

 考えすぎ?

 でも、不自然だよね。

「なんだよ、ケイの奴……て、あ! そこの葉っぱみたいな名前のお前!!」

 ダイ(名前が分からないからこう呼ぶしかない)と目が合って話しかけられた。無視するのもおかしいから一応返事をする。

「ハスミだけど。……ねぇ、あいつ、どうしたの?」

「さあ? 昨日から変なんだよな。ハスミは何か知らないのか」

 昨日という言葉に思い当たる節がありすぎて困る。

 ケイのクラスの前だったようで、ダイが寄りかかっている窓の向こうに友達と思われる男子数名が集まっていた。

 どう返答すればいいのやらと悩んでいた私に「あ、ハスミじゃん!」という声が中から聞こえてくる。