ちょっと甲高いけど柔らかい声がして、急いで振り返った私に、彼女は戸惑い気味の笑顔を向けていた。

「ハルちゃん!」

「おはよう……あ、昨日はごめんね。何か色々あって興奮しちゃって」

「あ、あのね、昨日のは……」

 ちゃんと、謝ろう。

 ちゃんと、違うんだよって。

 だけど……

「そ、そうだ、ハスミちゃん、今日の英語の宿題やった?」

 いつもの笑顔……なんだけど。だけど、少しだけ違和感を感じて、言おうとしていた言葉が行方を失ってしまう。

「やって、ない……かも」

「わぁ、大変! 英語の金田先生って提出物にすごい厳しいから。私の見せてあげるよ」

 そう言って、取り出した数枚のプリントを渡してくれる笑顔。

 その笑顔に、どうしてこんなに距離を感じるんだろ。言いたいことは沢山あるのに、言葉にできなくて、チャイムの音で自分の席に行ってしまう後ろ姿をもどかしく見るしかできなかった。