クラスの中では、もう彼の噂が広まっていて嫌になる。

 聞きたくもないのに、彼がどこの中学出身で、まだ高校に入って数ヵ月だというのに告白を三回されていた(どれも断ったらしい、よく知らないという理由で)とか勝手に耳に入ってくる。

 そもそも、彼と私の関わりなんか、なかったはずなのだ。

 いや、もしかしたらあったのかな。

 興味のないことは、すぐに忘れてしまう要領の悪い頭の私だから。

 そうだとしても記憶に何も残ってないほどの関わりで、なぜ恋に気づけたのか。

 やっぱり私はそこが気になってしまう。

「ハルちゃんは、好きな人いる?」

 唐突な質問に、ハルちゃんは箸で掴んでいた唐揚げを弁当箱の中に落とす。

 次いでぷっくりした頬が赤くなって、真ん丸な目が驚きで大きく開いた。

「へっ、あ……っ、えと」

「いるんだね」