「そうだね。ハスミちゃんのおかげだよ。あのまま学校に戻らずに明日になってたら、提出しても減点されていただろうし」
ハルちゃんの温かい言葉と表情に、照れと嬉しさで頬が緩む。
「そうそう、結果オーライ! 終わりよければすべてよし! て、ことでカンパーイ!!」
コーラが入ったグラスを篠田さんが掲げる。
「あ、あの時、笑った奴は後で青田先生に言付けして減点してもらうからね」
皆がグラスを上げて、それぞれのジュースを口にしているのを見ながら私が上機嫌に言うと、途端に噎せて動揺を隠せない男が一人いた。
「あらぁ、リョウスケ君、大丈夫ー? お顔が真っ青!」
私が滅多に出さない慈愛に満ちた顔で心配してやっているのに、リョウスケは世にも恐ろしいものでも見たような顔して不自然に目をそらした。
「はいはーい! ハスミン、リョウが笑ってるの私見たよー」
素直な篠田さんの頭を優しく撫でると、彼女は頬を赤く染めて、甘えるようにすり寄る。
「俺だけじゃない! 俺以外にも、堀江だって……」
「田口さんには足を向けて寝られないよ。あの正義感溢れる背中はどんな英雄にも勝る」
王子様スマイルはどんな台詞だって格好がつく。それが薄っぺらい戯れ言だろうと。
哀れにも孤立無援な彼が救いを求めたのは冷酷な悪魔で、そこもやっぱり期待するだけ無駄だった。
「ハスミを馬鹿にする奴は絶対に許さない」
しくしくと哀れっぽく泣くから、最終的に私がただの冗談だったと慰めてやらねばならなかった。


