アウト*サイダー


 皆に煽てられるままマイクを取って歌わされたリョウスケだが、意外と上手くてリクエストが絶えない。主に篠田さんからの。

 そんな彼女がお手洗いに部屋を出て、リョウスケはやっとマイクを手放した。

 次に歌うのは須賀さんで、何を歌うんだろうと思っていたら、まさかの演歌だった。誰もが知っている名曲で、素人には難しいものだが、須賀さんは難なく歌っている。力強くこぶしの利いた歌声だ。

 私とハルちゃんで間の手を入れる。それを横で聞いていたリョウスケが面白そうに笑った。

 ふと、先程の舞さんが頭に浮かぶ。それから篠田さんのことも。

 恋愛事に疎い私でも何となく感じ取る空気。気になる。すごく、ものすごく。ただ、興味本位に尋ねるのは気が引けた。

 リョウスケはもちろん、篠田さんも大事な友達。その二人が上手くいけば良いなと思うけど、もしリョウスケが舞さんに気があるのなら、舞さんの様子から察するに二人が付き合う可能性は十分にある。そうなれば篠田さんが失恋してしまう。

 そもそも、三人の気持ちを知らない私が変に気を回そうとしたって仕方ないことなのだろう。

 お手洗いから帰ってきた篠田さんは当たり前のようにリョウスケの隣に座って、また歌って欲しい曲を彼にねだっている。

 彼女がねだるのは、ほとんどが恋愛ソング。その意図は図りかねる。ただ、その横顔がひたすらに可愛いのは事実で、私と須賀さんとハルちゃんが目だけで意志疎通をして渋るリョウスケを脅し……いや、説得させた。