受け付けで会計を済ませて、マイクやらが入ったカゴを受け取る私に天女の如く笑顔を向けるその人。彼女こそが舞さんだった。
カラオケ屋に着いて、探さずとも分かった。リョウスケに気づいた彼女は驚いたような表情をした後、今みたいに笑って「いらっしゃいませ、お客様?」とおどけて言い、リョウスケは恥ずかしそうにしながら「お疲れ様っす、舞さん」と会釈した。
「リョウスケ君は学校でも人気者みたいだね」
私が持ったカゴをケイが横からヒョイと奪って行く。話しかけられた私はそれを横目に見送って「人気者……ですね。ある意味で」隣にいるリョウスケを含み笑いで見上げる。
「な、なんだよ、ある意味って!」
「えー? 別にー?」
指定された部屋に向かう皆に続いて歩きだそうとしたら「リョウ!」と先に行っていたと思っていた篠田さんが戻ってきて、リョウスケの腕を掴んだ。
「早く行こうよ! リョウにはいっぱい歌ってもらうからねー!」
ぐいぐいと引っ張られるリョウスケは困惑しながら舞さんを振り返ってぺこりと頭を下げた。舞さんは笑顔で手を振る。しかし、二人が廊下の奥に姿を消すと、幾ばくか寂しそうな表情になった。
私に気づいた彼女はすぐに元の笑顔に戻る。私は何か声をかけるべきなのか頭を悩ましていたが、うまい言葉が出てこずに会釈してから部屋に向かった。


