……無駄に踊らされただけだった。
私から向けられる冷たい視線に、冷や汗をダラダラと流すリョウスケ。彼は静かにケイの後ろに隠れた。
私は愛くるしいモフモフに目を向け、ため息を吐いた。
リョウスケも自分のお金を出して挑戦してくれたが、モフモフは出口の穴の間近で踏ん張るように動かない。
きっと私の元に来たくないんだろうな。
「……もう諦めるよ」
肩を落とす私にスガシノが優しく頭を撫でて抱き締めてくれる。リョウスケが申し訳なさそうに謝るのを、逆に申し訳なく思って首を振る。
気持ちを切り替えて、次はどこに遊びに行こうかと話す。
すぐ近くにリョウスケがバイトしているカラオケ屋があるらしく、以前から気になっていた“舞さん”という先輩を見てみたいこともあり、カラオケに行こうと話していたら、後ろから私の名前を呼ばれた。
振り返った私の目に入った光景の、あまりの眩さに立ちくらみがした。
「ハスミ、嬉しい?」
モフモフを両手で抱えて、笑顔を浮かべるケイの可愛さの破壊力は相当なものだ。近くにいた店員のお姉さんも、偶々居合わせたお客さんも関係なく虜にしてしまう。
こんな皆に見られている状況ではしゃぐのは憚られて、でも、私の為に取ってくれた嬉しさを隠しきれる自信がなくて、手渡されたモフモフに顔を埋めながら彼の手を握った。
聞こえるか分からないけど「ありがとう」と呟く。彼は何も言わずに握った手にちょっとだけ力を込めて皆の所まで引っ張ってくれた。


