プリクラの中へと入ってお金を入れようとした私の手を後ろから彼の手が掴んできた。その流れのまま私は彼に抱きしめられていて、身動きが出来なくなった。
ほんの小さくため息を溢して、それからクスッと笑う。顔を寄せたケイの頭を撫でてやると、彼は目を閉じて微笑んだ。
「今は俺だけのハスミだ」
いつもより、かすれた低い声が耳元で呟いた。プリクラの中は青白い照明が少し眩しくて、私も目を閉じた。
「いつだって、ケイだけの私のつもりなんだけどな」
冗談ではなく本心から言ったのに、後ろから聞こえてきたのは納得してないような「ふーん?」という返事。
さっき撮ったプリクラの不機嫌な彼の顔が頭に浮かぶ。
「私が好きな笑顔のケイとプリクラ撮りたいなぁ、ていう可愛い彼女の願いは叶えてくれないの?」
振り返って見上げた私に、しかめっ面だったケイが破顔するまで、そう時間はかからなかった。
……ただ、撮影中ずっと抱き締められたままで、そのほとんどが同じポーズ……というか、キスされていたことに今度は私が膨れっ面になる番だったけれど。
更に悔しいのは、そのどれにも写る彼の横顔が微笑を浮かべた、最高にキュートなもので、隣にいる最悪にブスの私がいても画像を消せないことだった。
「可愛いよ、ハスミ」
ふにゃけた顔で笑う可愛い彼を横目で睨む。そうでもしないと、私までふにゃけた顔になりそうだ。


