目的の商店街前まで来て、信号待ちする。日陰のない場所だから、太陽が容赦なく照らすのを少しでも遮ろうと両手を目の上に当てて陰をつくる。

 それを隣で見ていたケイが私の後ろに移動してきて、私をその場でしゃがむように言った。言われた通りにしたら、上体を屈ませて私に日が当たらないようにしてくれた。

「これぞ女が求める理想の図ね」

「リョウもこれぐらいできる男にならないとねー」

 少し離れた所でスガシノが話しているのが聞こえる。

「良かったね、ケイ。理想の彼氏ってことだ」

 顔だけ上げて彼を見上げる。ケイはなんてことないといった感じで首を振った。

「別に。俺はハスミの為に出来ることは何でもしようと思ってるだけだから」

 信号が青に変わる。後ろから両脇を抱えあげられて、ストンと着地する。そのまま流れるように彼と手を繋ぎ横断歩道を渡っていて、私は内心呆れたような気持ちになった。

 そのうちに、私は彼がいないと何にも出来ない子になっちゃいそうだ。それだけは阻止しなければ。

「理想の彼氏になんか負けないから」

 勝手に敵対心を向ける私に、彼は特に反応を見せない。

「ほら、ハスミ人多いからこっち来な」

 私には彼の余裕の笑窪を崩せる技量を持ち合わせていないのか。ちょっぴり悔しい気持ちになりながら、素直に彼の方へ駆け寄る。

「ハスミこそが俺にとって理想の彼女だよ」

 そんなことを耳打ちされて、やっぱり私には敵わない相手だと思い知らされた。