ケイはチラッとだけ隣の席を見て、それからまた私の方に体を傾けさせて「それは良い提案だと思います」と、小声で話し「では、そういうことで」と、私が小声で言えば彼がぺこりと会釈を返して、何事もなかったかのように二人の距離が元に戻った。

 その私達の前に、トイレで席を外していたリョウスケが帰ってきた。彼が無言の私達を見比べて不思議そうな顔を向ける。

「どした? またケンカか?」

 彼の問いに私とケイは顔を見合わせて、それからフッと一瞬笑って、私は食べかけのバーガーを口に運んでいき、ケイは残り少ないコーヒーをズズっとすすった。

「なんだよ、変な奴らだな」

 リョウスケが肩をすくめて自分のメロンジュースのストローに口を付ける。それはさっきいない間に篠田さんが飲み干していたものだった。

 案の定、空の容器からは吸い上げられるものがなく、怒ったリョウスケはまず私達を疑う。

 私は証拠があるのかと問い質し、ケイがいつもの如く冷たくあしらう。リョウスケは強気な態度を取られるとめっぽう弱いから、早々に諦めて、隣の席まで犯人探しをしに行った。

 しかし、そこでも相手にされずに肩を落として戻ってきた。

 さすがに可哀想に思えて犯人を教えてあげようとしたが、その前に篠田さんが新しいジュースを買って持ってきたので口を閉じておいた。