皆お腹を空かせていたから、まず向かったのはファストフードのお店だ。篠田さん曰く、アメカジスタイルにはバーガーが似合うとのことで決まった。

 私としては借り物の服(しかも白色)にソースでも付けたらどうしようと不安でしかなかったが、それをケイに伝えると店員さんからプラスチックのフォークとナイフをもらってきて、彼が全部一口大に切り分けてくれた。

 それを周りの皆が放っておくはずもなく、散々茶化された。そんな中でも彼はどこ吹く風で、わざわざ見せつけるように私に食べさせようとするので、それは丁重に(彼の手からフォークを奪い取って)断っておいた。

 だけど、通路を挟んだ隣の席にいたハルちゃんと堀江君カップルが楽しそうにポテトを食べさせあいっこしてるのには少し羨ましい気持ちになった。

「ねぇ、ケイ?」

 ラブラブカップルからケイに目を向けて、彼にだけ聞こえる声で話しかける。

「ん? なに?」

 隣でコーヒーをすすっていた彼がストローに口を付けながら振り向く。

「あのね……」

 やっぱり、変なことは言わないでおこうかな。そんな気の迷いで口ごもる私に、ケイが優しく笑いながら「何でも言ってごらん?」と体を傾けて自分の耳を私の方へ近づけさせた。

「あのね、私も本当はああやって、食べさせあいっこしたいの。ただ、皆の前じゃ恥ずかしいから、今度二人の時にしたいな……て、思ってるんだけど、どうですかね?」