全校生徒が始業式に参加する中で、私達は上履きを脱ぎ、久々に履いたローファーにまた足を入れている。

 チキンなハートが汗をかいて震え上がっているのを無表情で隠していたが、目敏いケイが「不良の仲間入りだね。おめでとう」と面白がるので皆が笑った。

 リョウスケだけは許せなかったから、履き替えて置いたままだった上履きを蹴ってやった。煩く鳴いていたけど無視した。

 校舎から出れば容赦ない日射しが照りつける。サボろうとしているのを咎められているような気もするが、浮き立つ心でワクワクしていて、戻ろうとは思わない。

 以前なら『逃げたくない』と、『負けるものか』と、居場所のない教室に無理やり居続けていただろう。それが正解だと思っていたから。

「案外簡単に出れそうだね」

「もし先生に見つかっても、課題を忘れたから取りに戻るって言えば良くないかな」

 お互いに見つめ合って頬を染めるカップル。その隣では……

「とりあえず制服だと色々面倒じゃない?」

「じゃあ、スガっちゃん家で派手に着飾って、そっからご飯食べて、ゲーセン行こー! リョウもそれで良いよね?」

「おう……てか、俺ら何気に初絡みだけど、もうあだ名で呼ぶ感じなのね?」

 ギャル二人に挟まれて戸惑うチェリーボーイ。篠田さんはお構い無しに彼の腕に自分の腕を回す。

「私のことはシノちゃんて呼んで良いよ!」

 篠田さんの積極性にタジタジなリョウスケを後ろから見て笑うのを何とか堪える私に、ケイが「リョウスケの苦手なタイプだ」と耳打ちした。