「おーい、そこの三人! ちょっと提案があるんだけど」
須賀さんの声のすぐ後にチャイムが鳴った。早いクラスではもう体育館に移動しているようで、廊下が混み始める。
邪魔にならないように階段の踊り場前の広い所へ避難した。
通り過ぎて行く子達は夏休みの思い出だったり、沢山もらった課題の文句だったりを話しながら下に降りていく。後ろから教師の急かすような声が聞こえる。まるで羊の群れを誘導する牧羊犬みたいだ。
「もう堀江君とハルルには話してたんだけど」
「私らの夏休みはまだ終わってないと思うの!」
リョウスケが未だにケイにまとわりついていて、それを邪険に扱われているのを横目にスガシノコンビの話しに首を傾げる。
夏休みはもう終わった。だからこうして始業式が始まろうとしているのだ。私達が足掻いたところでどうにもならない。
「……ってことで、今から学校抜け出して遊びに行かない?」
リョウスケを無視したケイが私を後ろから包み込む。頭に乗せられた顎の重みで首が下がった。
「いやいや、待って須賀さん。どういうことでそうなるの?」
学校を抜け出す主旨が分からなくて聞いた私に、スガシノコンビがやれやれと首を振って溜め息を吐く。
「もう、変な所で大真面目だなぁ、ハスミンは」
「嫌なことがあったら、それを上回る楽しいことで忘れなきゃ。それとも、あんなクソみたいな連中がいる空間に居たいわけ?」
悩む時間もなく私は首を横に振る。急に動いたからか頭上にいたケイが離れた。と思ったら、少し屈んで私の頬に顔を寄せてきた。
暑苦しさと、気恥ずかしさで顔が熱い。さりげなく距離を取ろうとしたが、リョウスケがケイの上に体を乗せるように肩を組んで、男二人分の重みによって身動き出来なくなった。
「いいじゃん! 行こうぜ!!」


