泣いてスッキリしたから、笑いのツボが浅くなったのかな。笑う私に不機嫌になる一方のケイがたまらなく可愛く見えて、余計に笑いが治まらない。
「おい、コラ、そこのバカップル」
ケイにしがみつくようにして、ヒイヒイ笑っていた私と、眉間に幾つもシワを寄せ、口も真一文字にさせたケイの間にリョウスケが割って入ってきた。
「離れろ! 公衆の面前だぞ。恥ずかしくないのか、キミ達は!」
まったく、最近の若者は……なんて無いはずの顎髭を撫で付け、細めた目で私とケイを交互に見る。
「羨ましいなら、そう言えよ」
彼がまたいらぬ事を呟く。
「はぁ!? べ、別に、そんなんじゃねぇから!」
リョウスケも無視すれば良いのに、律儀に吠え返すものだからケイが皮肉な顔して笑う。夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、彼らのこの不毛な言い争いも同じことだろう。
ここで私が介入しようもんなら、何がなんでも勝ちたいリョウスケが味方につけようとし、それにちょっとでも同意すればケイが不貞腐れて、その後ずっと文句を言われるのが分かっているので、私は傍観を貫こうと思う。
「あ、そうだ……あれ知ってるか?」
シニカル顔をより深めて首を傾げるケイに、純真な顔で耳を傾けるリョウスケ。
「ダイに彼女が出来たんだってさ」
ケイの言葉で分かりやすく光を失っていく目。何がそんなにショックなのだか分からないが、相当な衝撃を受けているらしい。唇がわなわな震えていた。
「な……な……何ぃぃっ!?」


