「うぐぇっ……い、痛ぇ!?」
「おい、変態め。どさくさに紛れてハスミに手を出すな」
「同じく。ハルには指一本も触れさせないよ」
似たような笑顔で理不尽に脅す二人に、リョウスケは違う涙を流す。
少し申し訳ない気もしたが、私は堪らず笑ってしまった。
「やーん、今のハスミン、めっちゃ可愛かったんだけど!」
篠田さんがまるで動物を愛でるかのように私の顔を両手で包んで、触れてはないけどちゅっちゅっと唇を鳴らす。
「止めなよ、シノ。宮永がまじでキレる五秒前だから」
須賀さんの忠告も「何かそれ古くない?」とケラケラ笑って聞き流す。すると、どこからか痛々しい呻き声が聞こえ始めた。
「ハ、ハスミちゃんっ……谷君が……!」
異変を感じたハルちゃんが振り向いて焦ったように言う。呻き声はどうやらリョウスケのものらしく、堀江君はもう彼から手を離していたが、ケイが無表情で私を見ながらリョウスケをヘッドロッグしていた。
どうしてそうなった!?
思わず心の中でツッコミを入れながら、リョウスケの救出に向かう……と、目につかぬ速さで今度は私が捕まっていた。
ヘッドロッグではなかったけれど、ぎゅうぎゅうと強く抱き締める腕の中はとても窮屈だ。
「うぅ……苦しい……」
「俺も苦しいよ。移り気な彼女に振り回されて」
何を言うか、こいつめ。
つい恨みがましい目になる。それを見られているとは思いもしなかった。だから、見上げた先にあった同じような目をした彼と目が合った私は、可笑しくなって噴き出した。


