リョウスケの声は良く通る。三メートルぐらい離れた場所からでも余裕で届く。
そんな声で行く人、行く人に声をかけて私達のクラスで起こったことを吹聴していく。その人達が、開け放たれた窓からそれを覗いては呆れや嫌悪を吐き、中には面白可笑しく騒ぎたてる人も。
リョウスケの友人一同が現れると、それは最早野次馬ではなくなっていた。
「誰だよ!? こんなくだらない事したのは!」
「早く田口や伊織さんの席を戻してやれよ」
「お前ら小学生かよ……はぁ。しでかした奴もそうだけど、それをただボケッとただ見てた全員が共犯なんだからな、ちゃんと謝れ」
俯いて黙っている私達を哀れに思ってくれた正義感の強い男子達が、盾になるように前に立つ。
「はぁ!? 俺らは何の関係もない!」
「そうだ! 女子達が勝手にやっただけの事で批難される筋合いはないぞ」
「わ、私達だって、何も関わってない! 朝来たらこうなってただけなんだから」
クラスメイトも焦って反論するが、廊下に集まった群集にたじろいでいる。
ただ、私が望んでいるのはそれだけではない。
確かに……クラスメイトのあの、他人事だからという面に腹が立ったことは数えきれない程ある。正直、もっと責められてしまえとも思っている。
しかし、必死に言い訳を並べるクラスメイトの傍らで、遥か高みから見下ろしているかのように、憐れむ顔を浮かべる彼女を地獄の底に引きずり下ろさぬ限り、私は死んでも死にきれないだろう。
死ぬつもりなんて端からないけどさ。


