アウト*サイダー


「ハスミ! お前って奴は本当に薄情者だ!! 休みの間に会ったの、ばあちゃん家に遊びに行って偶然出会したあの一回きりだろ!? 俺の誘いのメッセージも既読スルーしやがって、俺はあまりの悲しさにラーメンやけ食いして二キロも……太って……?」

 廊下から足音を響かせて近付くリョウスケの喚き声。いつもなら鬱陶しいが、今はナイスタイミングだと、顔がにやけるのを俯いて隠す。

「何だ……教室の入り口に立ち止まってさ?」

 ハルちゃんがハッと我に返ったように振り向く。狼狽える彼女の手を握る。大丈夫だと、何も不安がる事はないのだと伝われば良いな。

「おい、ハスミ?」

 流れに身を任せていれば、その流れは私達の味方になる。

 つい最近出来た口内炎。今日の朝も、ご飯を食べていたら誤って噛んでしまって泣きを見た。それを私は思い切り噛み締めた。

「リョウスケ……っ」

 目から涙が流れ落ちる。

 ちょっと、というか、大分痛い。

 口内炎が。

 驚愕に目を白黒させる彼がこっちに駆け寄ってくる。そうして教室の異様な空気を感じ取り、リョウスケも何度も座った私の席やハルちゃんの席が無くなっている事に気付く。

 状況を飲み込めないでいる彼に、周りには悟られない小さな声で耳打ちする。

「口内炎は噛んだらアカン」

 下唇を少し引っ張って、無惨に痛め付けられたそいつを見せた。リョウスケは戸惑う顔を見せる。

「だから、皆にも教えてあげないと」