「はい、おしまい。また熱中症になられたら困るから、家の中に戻って」

 一瞬だけ力強く抱き締めた後、すぐに私を離して笑いかける。

 呆気にとられる私だったけれど、せっかく会えたのに、これで終わりなのは納得出来なくて彼の手を繋ぐ。

「じゃあ、ケイも一緒に来て。アイス、いっぱいあるし、お菓子もあるよ」

 ケイは困ったように眉を下げて、それでも首を縦に振ろうとしない。

「さすがに二人きりはダメ。それに、サラに留守番頼まれてるから、もう帰らないと」

 口を突き出していじけて見せても、頑なに譲らない。本気で泣いてやろうかとも思ったが止めた。

 彼が私から遠ざかるように体を横に向けて、視線をそらしていた。何となく拒否された気がして、満たされていた器がひっくり返されて中身を全部ぶちまけられたようだった。

「分かった。バイバイ」

 彼を困らせたいとは思っていない。はずだが、どうしてもぶっきらぼうな言い方になっていた。

 せめて、見送りぐらいはしたいと、手を離して表の道へと歩き出す。

「来週、暇?」

 後ろで聞こえた声に振り返る。太陽の光を浴びて、暑さと眩しさに目を瞬かせる私を彼が日陰から笑う。

「暇人で悪い?」

「ううん。デートしよっか」