そうして言わなきゃ良かったと思うのはお決まりで。分かってるのはこんな自分が一番嫌いなこと。

 動き出せない私の足を睨む。

 立ち尽くす私の横をいくつも足が通っては離れていく。

「ハスミ? 顔上げて」

 下を向く私の狭い視界。そこに宮永と丁寧な字で書かれた上履きが現れた。

 きっと、このまま顔を上げたら余裕の笑窪があるんだろう。なら絶対に上げてやるもんかと拳をつくる。

「泣かないでよ」

「は? 泣いてなんか!」

 勢いよく向けた視線の先では想像した通りケイが笑っていて、私の両頬をしっかり摘まんだ。

 抗議の言葉を投げかけても、どうしたって間の抜けたものしか出せない。

 それを面白がるケイを見ているうちに、恥ずかしさとか怒りとかどうでも良くなって、ずっと抱いている疑問が湧いてくる。

 私が急に黙ったからか、彼が頬から手を離し、かわりに私の右手がぐいと前に突き進んだ。