「……終わった」

 解放された時にはぐったりしていたが、机の上に突っ伏そうとした私に「ハスミン!!」という二人のお叱りが轟き、背筋を伸ばさざるおえない。

 そこで、ようやく鏡に写った私を目に入れた。

 青白くて特に華もない私の顔が、全くの別人に生まれ変わっていた。

「なんっじゃこりゃ!?」

 おったまげー、な私に、自分も化粧をし直した篠田さんが得意顔で見つめていた。

「初めてハスミン見た時から、こうしたかったんだよね。メイクしないでも可愛いけどさ、したらもっと可愛くなるのにーっ、て思ってた」

 篠田さんの話にも、鏡に写る私も未だ信じられなくて、鏡とにらみっこする。

 均一に塗られたファンデーションは顔色を明るくし、艶のある肌になっている。一部分が剥げていた眉も綺麗なアーチを描いて、はっきりしないぼやけた目は睫毛がくるんと上がって、ライナーで引いた線が目を大きく見せる。リップはマットな質感で色の濃い赤色だけど、輪郭をあまり目立たせないでぼかしているから、キツすぎない印象になっていた。

「さ、せっかくメイクしたし、プリクラ撮ろう!」

 はしゃぐ篠田さんの後を須賀さんとハルちゃんが続く。私はひたすら化粧の力に戦慄いていた。