満たされたお腹を抱えて幸せなため息を晴天に吹き上げる。それが隣からも聞こえてくる。

 ケイを見れば、何とも無防備に太陽の光を浴びていた。

「……教室に帰んないの?」

 食堂の前は私たちのように昼食を食べ終えた人らが自販機でジュースを買うのに群がっていたり、並んだベンチで談笑していたりする。

 私はすぐにでも教室に戻る気でいた。ケイと昼休みを過ごす理由がないし、きっと彼は私といるより友達といた方が楽しいだろうし。

 そう思って歩きだそうとした私の腕が後ろに引っ張られていて、振り向けばケイの寂しそうな表情があった。私の心が騒ぐ。

 動揺か、期待か、何にせよ漠然としたものが渦巻いて混乱する私へ、ケイは口を開く。

「まだハスミと居たい」

 なんでそういう事を簡単に言えるんだろう。

「…………うん」

 なんで私は掴まれている腕の熱を、心地よく思ってるんだろう。