結局、ほとんどを寝過ごして、映画の感想をハルちゃんに聞かせてあげることは出来そうにない。

「良い映画だったね」

 上機嫌で嫌味を言う彼に反論する資格もない私は「ごめん」としか言えなかった。

 よくよく考えれば、初デートなのに寝ちゃう彼女ってヤバいだろう。それに寝顔なんて一番見られちゃダメなやつだ。口開けて寝てたりしたら……幻滅しかしないはず。

「どうしてハスミが謝るの? あんなに可愛い顔して寝るのを俺に見せてくれたのに。しかも、俺に寄りかかって、気持ち良さそうにさ。あぁ、可愛かった」

 あんたも映画観てなかったんかい!

「……うん、まぁ、おかげさまで良く眠れたわ」

 ケイの言う可愛いはあんまり信用しない方が良い。私がどんなブサイクな顔しても、嘘偽りない顔で笑って「可愛い」と言いそうだから。

「ハスミ、俺の言葉疑ってる?」

 顔に出ていたのだろうか。

「はぁ……。ハスミはもっと自覚するべきだ。自分がどれほど可愛いか。そんな無自覚だから男をホイホイ惚れさせてしまうんだよ」

 ゴキ○リホイホイみたいに言うな!

「あんたこそ女子に告白されてるんじゃないの。ていうか、私は誰も惚れさせてないから」