ケイは私の手から漫画を取って、熱心に表紙やらあらすじやらに目を通す。
そんなに見たいなら巻かれているビニールを取ってあげようかと言えば、無言で首を左右に振られた。
「俺、漫画とか最初から読まないと嫌なタイプなんだ」
……え、あらすじ読んでる時点でアウトじゃない?
思ってることが口に出てしまいそうになるが、堪えた。真剣な表情の彼を邪魔せず、もう暫く眺めることにした。
思えば、彼の私服姿を見るのは初めてだ。
白い開襟シャツに黒のテーパードパンツという、極めてシンプルな格好。そんな何の飾り気もないのだけれど、制服とは違う雰囲気がすごく新鮮で良い。
それに、こういう服装は私自身好きだったりする。
「家に一巻からあるけど貸そうか?」
リョウスケも愛読しているのなら、三人で漫画談議なんてするのは面白そうだ。
「いいの?」
嬉しそうに明るくなった表情に笑みが溢れた。もっと彼の為に何かしてあげたい気持ちが大きくなる。
「家に来てもいいよ」
十巻以上出ている漫画だから運ぶのが大変だ。それなら彼が読みに来てくれるのが手っ取り早い。何より、そっちの方が楽だ。
私の前に頼んだパンケーキがやってきた。続けてストレートのアイスティーとアイスコーヒーが置かれた。彼はパンケーキを頼まなかった。私が食べているのを見るだけで良いと言って。


