映画を初めて観たのは物心がついた時ぐらいだったと思う。
両親がそろって映画好きで、私は二人に手を引かれ、訳も分からずスクリーンに映し出されたものを眺めていた。内容は憶えていない。ただ、子供向けではなかったはず。
いつも連れて行ってくれたのは、ショッピングモールに併設されているようなシネコンではなく、繁華街にひっそりとあるミニシアターで、そこで上映されるのはB級映画だったりショートフィルムだったり。
台詞のない映画も観たが、小学生には理解し難いものだった。それでも私は、そういった映画の世界観の虜になっていた。
中学校にあがると、トクラと一緒にショッピングモールまで自転車をかっ飛ばして観に行くようになり、そこで初めてハリウッド映画や、同級生達がこぞって観たがる恋愛映画なんかを観た。
分かりやすく、テンプレートのような展開。もちろん、役者の演技は素晴らしく、迫力のある音響も、全てが完璧だ。
ただ、私の好みとは少し違った。
ミニシアターはシネコンと違って、広い訳でも観やすい訳でもない。流行りの作品を上映することもないけれど、万人に受けずともこだわり抜いた作品を観られる特別感が私は好きだ。
「何、観る?」


