「ハスミ、いつもと雰囲気違うね」
ほら。不安は的中した。
遠慮するという言葉をまるで知らないみたいに、彼はむき出しの脚をまじまじと見ている。
というか、何で私が恥ずかしがらないといけないのよ。普通、あんたが目のやり場に困って……みたいな感じになるんじゃないのか。
昨日、色々とアドバイスをもらったけど、早くも挫折してしまいそうだよ、ハルちゃん。
「制服じゃないから、そう思うだけでしょ。……そ、それより早く映画館行こう」
時間は然して急がなくとも良い。私が言った通り、時間厳守で待ち合わせ場所に来たケイ。早めに来た私がほとんど待たされていないから、むしろ余裕がありすぎる位だ。
余裕がないのは私自身。
慣れない服装で、ハルちゃんから教わった付け焼き刃でしかない化粧(と言っても日焼け止めを兼ねたCCクリームに軽くパウダーをのせ、眉を整え、薄く色付くリップを塗っただけ)をする自分が、彼にどう見られているかが気になって落ち着かない。
つられて、周りの目も気になってくる。
いつもの男の子のような服装ならば、見られている意識なんてこれっぽっちも感じない。が、今は不自然でしかない女の格好をする自分がとても異質なものでしかなくて、それは他の人にもそう見えているのでは、と邪推する。


