否、ド変態野郎の顔だった。

 両肩を押しただけで彼はよろめき、尻もちをついて離れた。

「ほんと、強情なんだから」

 そっぽを向いて、涙を拭う。そもそも泣きたかった訳じゃない。ちょっと気が緩んだだけだ。

「もう、変なことしないから。ちゃんと教えて」

 胡座をかくケイに「制服汚れちゃうよ」と親切に言ってあげたのに彼は気にする素振りもなく、私の頬をつまむ。

「言わないとハスミの頬っぺた伸びちゃうぞ」

 まるで小さい子に言い聞かせるような言い方。ほんと、ムカつく。ムカつくけど。

「……夏休み」

 私がぼそっと言った呟きに、ケイは頬から手を離して耳を傾ける。彼の真っ直ぐな目に心が落ち着かない。私は少しだけ横を向いて膝を抱え込む。

「夏休み……も、会いたい」

 あーあ、言っちゃった。しかも、最高に不細工な顔で。

 事あるごとに泣くようになって、変な癖がついちゃったのかな。目がちょっと熱くて痛い。

 こんな私じゃなかったはずなのに。

 膝に顎を乗せて、ちょっと怒った顔して彼を見る。

「私よりお金が大事なら、別に会わなくても良いけどね」

 自分でも思うけど、私は本当に甘え下手なのだろうな。こういう時こそ彼にすり寄ってゴロニャンと可愛く甘えれば彼女の鑑ってもんだ。

 一度、想像してみる。

 ……うん。やった直後に死のうとするだろうから、しない方が身のためだ。