昨日の放課後。私はケイに堀江君を呼び出してもらった。その理由はただ一つ。

「いい加減、目障りなんだけども」

 もう我慢ならなかった。青筋を立てて言った私に、相変わらず気にくわない笑顔で「てっきり、また告白してくれるのかと思ったよ」私を馬鹿にする。

「あんた……ハルちゃんが好きなんじゃないの? にもかかわらず河西さんにべったりくっついて、何考えてんのよ」

 サッカー部員とマネージャーなんだから一緒に居たって違和感はない。が、しかし、休み時間ごとに教室に来て仲良くしている様を見て、周りがどう思うか?

 それじゃなくても、ハルちゃんが良く思うはずがない。あんな寂しそうな横顔を黙って見ていられる私でもない。

「別に、田口さんが口出しすることではないだろ」

 身長差のある彼が私を無表情で見下ろすだけで怖気づきそうになる。それを見透かしたように、堀江君はぱっと表情を変えた。

「でも、伊織さんが最近楽しそうに笑っているのは田口さんのおかげだからね。そうだ……図々しいかも知れないけど、一つお願いを聞いてくれないかな?」

 含みのある笑い方。

 私は堀江君のお願いを聞く代わりに、今までの行動の理由を問い質した。「田口さんの探究心には敵わないな」と彼に鼻で笑われたけど。