知らぬ間に目の前で仁王立ちするケイ。隣にいたリョウスケも、気付くと私の後ろで小さくなっていた。
今日だけで二回も彼に手荒なことをされるのを、さすがの私でも見放すことはしない。
「もう機嫌は良くなったのかな、ボクちゃん?」
指でケイの鼻をツンとつつく。彼は最大限に眉根を寄せてしまう。
「あら、まだ拗ねてる。だいたい、バイト三昧で彼女を放ってるのはケイなのに。私が寛大な心で許してあげてることを忘れないでほしいわ」
付き合ってから今まで、学校以外で会ったことは一度もない。……私も家の手伝いとかがあるっていうのもあるけど、ケイがほぼ毎日バイトを入れているのは事実。
痛いところを突かれたようで、ケイは完全に戦意を喪失して、後ろからは「え、まじで?」とリョウスケがケイに非難の視線を送る。
思った以上に落ち込むケイに慌てて「だから、今日デートに行こ!」とフォローした。しかし、更に顔色を暗くするから私もリョウスケも居たたまれなくなる。
あんちゃん、どれだけ働けば気が済むのよ。


