カラオケ屋って客として行く分にはいいけど、仕事となると大変そうなイメージがある。

「うーん……やることが多すぎるんだよな。接客から清掃に、調理。クレームとかはまだ受けたことないけど、酒の入ってるお客様には気を付けろって言われる」

「そっか。今度私も行こっかな。リョウスケの働いてる格好いい姿見たい」

「なっ……! いや、こ、来なくていいって。ていうか、来るなよ」

 リョウスケは耳を真っ赤にさせて狼狽える。

「何でよ? リョウスケが頑張って、でもミスして怒られちゃって、めちゃくちゃに落ち込んでいる姿を見ても見てないフリしてあげるから」

「それ、どう見ても格好よくないじゃん!」

 あはは、と笑い流す私にリョウスケは「益々、ケイに似てきてるぞ」と悔しそうに言った。

「私が?」

 どこが?

 あんな、ていう言い方は良くないだろうが、皮肉だらけで自己中野郎と似ているところなんて一つもないではないか。

「この優しさと慈愛に溢れた私のどこが?」

「逆に優しさと慈愛がハスミのどこら辺にあるのか聞きてーよ」

「よく言ったもんだな」

 彼が最高に機嫌の悪い時の声が、上から降ってきた。

「人の彼女を好き勝手言えるなんて、リョウスケくらいじゃないのか?」