「それで、堀江君はここに何の用で?」

 抱えたハルちゃんは未だフリーズしていて、再起動には時間がかかりそうだ。

 プシュプシュと湯気でも出ていそうな彼女を、堀江君は暫く黙って見つめて、やがて、聞こえるか聞こえないかぐらいの溜め息を溢した。

「たまたま、通りかかっただけだよ」

 キラキラと光る粉が辺りに散らされているような笑顔でそれだけ言って、彼は本当に教室から去っていってしまう。

 少し、苛め過ぎただろうか。もやもやと罪悪感が残る。

 それにしたって、ハルちゃんの腑抜け具合には私も呆れた。

「そんなになるもんかね?」

 小さく縮こまったハルちゃんは私の肩にもたれて僅かに頷く。

「ハスミもこんな風に俺のこと意識してくれても良いのに」

 不貞腐れたように背もたれの所に肘を置いて、私が振り返ると、わざとらしくそっぽを向く。

 ほんと、面倒くさくて、可愛い過ぎるんだから。あとでいっぱい頭を撫でてやるからね。

「ハルちゃんの恥じらう姿は可愛いけど、それだけじゃ堀江君が不憫だなぁ。あんなに構ってアピールしてたのに、ハルちゃん自分のことしか考えずに無視しちゃうんだもん」

「う、そんなつもりは……」

 シュン、と項垂れるハルちゃん。はぁぁ、可愛い。ハルちゃんを先に撫でちゃう。

「ハスミの浮気者」

 後ろからケイが私のスカートのウエスト部分に指を引っ掻けてグイグイ引く。我慢という言葉を知らんのか、この男は。