じりじりと迫ってくるケイの口角が意地悪く歪んでいて、私の焦る反応で楽しんでいるようだ。

 それにしても、いつもは教室でこんなことしないのに。どうして急に?

 ケイの肩を押して、キスしようと近付けてくる顎を押して。そんな押し合いをしている所に、突如現れたのは……

「人前で見苦しいから止めた方が良いと思うよ?」

 今日も今日とて麗しの堀江君が、ハルちゃんの目を後ろから手で覆い隠して微笑む。

 こちらも不意打ちには弱いらしい。彼女は全身がカチコチに固まってしまっていた。

 いや、自分だって中々恥ずかしいことしてはりますけどね。

 ひとまずケイを引き剥がして、それから息もまともに出来てないハルちゃんを堕天使から救いだす。

 ハルちゃんを抱き寄せる私の背中には、さっきと比べ物にならないほどの痛い視線が突き刺さっているが、仕方あるまい。

「そちらも止めた方が良いんじゃないかしら? 付き合ってもない女の子に後ろから目隠しなんて、はしたないですわよ」

 ハルちゃんの生存を確認する。だいぶ呼吸が浅くなって心拍数が上がっているが、命に別状はない。

「そうだね。ごめん、伊織さん。見たくないものを見せられて困っているんじゃないかと思って」

 カチン。早くも怒りのスイッチが入る。しかし、それでも何とか堪える。

 こっちはお前らのウフフアハハの姿を見たくなくて、ここに逃げてきたのよ……という思いを込めて微笑んだ。