「でも……私みたいなブスに叶うはずない。そもそも、堀江君は皆に優しいから。どうして、河西さんが私を目の敵にするか分からない」

 目を潤ませるハルちゃんは、まさしく天使そのものだ。

 やっぱり、あの堕天使腹黒野郎になんか渡すもんか。アイツの正体を暴いてやりたい。だけど、ここで堀江君の悪口を披露しても何のメリットはないだろうな。

 ただ気になるのが、河西さんが再びハルちゃんに目をつけたことだ。あの日、傘を返しに来た時のやり取りだけでこうなるのか疑問だ。

「堀江君がハルちゃんに、何かしてきたことある?」

「え? えっと……たまたま自販機の所で会った時に、間違えて違うジュースを買ったからってそれをくれたり、美化委員の仕事で花壇の水やりしてる時に、たまたま通りかかったからって手伝ってくれたりした……かな?」

 ハルちゃんは「私にだけじゃないよ。皆に優しいんだよ」と言うが、私にはそう思えなくて溜め息が出た。

 確かに、アイツにとって人に優しくするなんて当たり前なのかもしれない。実際、この前もそれを見せつけられた。

 でも、堀江君本人がハルちゃんのことを本気だと言っていたから、きっと、その優しさはハルちゃんだけに向けられたものだ。