今よりも子供だった頃、理由も何もなく、ただ「遊ぼう」の一言で友達になることが出来た。

 その子がどこの誰だろうが、どんな子だろうが、気にせずに鬼ごっこやらかくれんぼをしていたのに、いつの間にか外見やそのクラスでのカーストの位置で友達になるメリットとデメリットを考えなければ友達は出来ない。

 高校に入学した、その日。周りが見定めをしている中、出席番号の順で決められた席に誰とも喋らず座っていた私の肩を後ろから遠慮がちにトン、トンとされて振り返った。

 その先にいた彼女の真っ赤に染まった顔に、今思えば恋に似た感情を抱いていたのかもしれない。

 恥ずかしそうにハルちゃんは「あのっ、名前……聞いてもいいですか?」と上擦った声で言った。

 ハルちゃんがどうしてあの時、私に声をかけたのか仲良くなった後に一度質問したが、彼女は笑って「忘れちゃった」とはぐらかした。

 腑に落ちない所はあるけれど、あの何気ない一言が私にとってどれほど救いだったかを考えると、理由は何でも良かった。

 中学生の時の噂が高校に入って清算されたといっても、同じ学校だった人がいない訳ではない。

 私が行っていた中学校は素行の悪い生徒が多く、地元の評判が悪かった。だから、偏差値が高いこの高校を選んだ時は志望校が誰かと被ることはないと思っていた。