その背中へ、尚も辛辣な言葉を浴びせようとするケイの性根の悪さを叩く。ケイは打たれた腕を大袈裟に痛がる素振りをしたが無視する。

「面接どうこうの前に、日本語から直した方が良いと思う」

 私の言葉で余計に丸まった背中。隣ではお腹を押さえてまで笑っていて、苦しそうに涙まで溜めているではないか。

 悪気なき正論は、何よりも彼に堪えたらしい。しくじった私の頬を誰か打ってくれ。

「……無理だ。俺には面接なんか無理なんだよ」

「もう、ほら、無理じゃないから。こっち来て」

 なるべく優しく声をかけると、いじけ虫リョウスケが、膝の上に乗せていた腕から少しだけ顔を覗かせた。

「ほら、リョウスケ!」

 立ち上がってリョウスケを迎えに行く。顔を引っ込めていじけ虫の殻に籠ろうとするが、腕を掴み上げて彼を立たせた。

「三人寄れば文殊の知恵って言うでしょ。だから大丈夫!」

 リョウスケを連れてケイの所まで戻る。逃げないようにケイと私で彼を挟んで座った。

「誰も知恵を出すとは……」

 言いかけたケイを、咳払いで黙らせる。軽く溜め息を溢して膝に肘を置いたケイは、グラウンドで部活に勤しむ様子を眺めた。

「俺、面接とか、そういう真面目な場面て苦手なんだよ。あの重い空気と、俺みたいなガキを冷めた目で見る大人も、何か怖くて」

 首に手をやって眉を下げるリョウスケ。あぁ、何となく分かるな、それ。