声には出せないが、そうやって表情と口パクで遠吠えていると……

「何やってるの、ハスミ」

 珍妙な顔をしたケイが上から下りてきていた。

 言い訳しようと考え始める前に、ケイと、さっき下りていった感じの悪い女子を指差して、疑惑の目を彼に向ける。

「ん? どうかした」

 わざと、とぼけているようにしか見えないケイが私の手をとって、そのまま階段を下りる。

「……何、してたの」

「別に、何も」

 私の方をちらりとも見ずに、涼しい顔して答える横顔に腹が立つ。私はこんなに汗だくなのに。

「あっそう? ていうか、私はこの上に用事があったから来たの。だから離して」

 我ながら餓鬼っぽ過ぎる言い訳だ。

「ほんとに? 何にもないし、誰も居ないのに?」

 さすがに疑いの目を向けられる。でも、もう言ってしまったことは引き下がれない。

「ケイには関係ない」

 彼の手を振り払って階段を上がる。

 本当に、自分でも面倒くさい人間だと痛感するよ。情けなくて、格好悪い。素直に、あの子に告白されたのか、返事は何て言ったのか、聞けばいいのに。

 ……と、私を俯瞰する私にイライラする。そんな私に私がまたガッカリする。