押し上げられた顎を気にしながら、私から離れたケイは脱力したように壁にもたれた。俯く彼との間に流れる沈黙。

 最近はずっとリョウスケも一緒で、こうした会話の隙間が滅多になかったから、私は手持ちぶさたに立ち尽くす。

 ケイの表情を見てもぼんやりとしていて、話しかけたところで多分、まともな返事は期待できないだろう。

 時たま、彼は周りとの関わりを遮断して考え事するので、リョウスケ曰く、そっとしておくのが一番だそうだ。

 改めて、ケイをまじまじと眺めてみる。

 物思いに耽るその表情は、同じ歳の高校生だとは思えないほど大人びていてる。まぁ、喋れば割りと子供っぽいのだけど。

 彼のことを知りたいという欲が、知れば知るほど大きく、私の中で膨らんでいる。

 お母さんを幼い頃に亡くして、言葉では大丈夫だと言っているが、どんなに寂しい思いをしてきたのだろうか。

 でも、彼はお母さんのことについて、あまり話したくない感じだったから、あまりしつこく聞き出したくない。

 ただ、私はケイにとって、どんな些細なことでも話したいと思える相手になりたい。

 欲張りな願い、なのかな?