……彼の口から、私以外の女の人の名前が出たことに、その人のことを思い浮かべて優しい顔をする彼に、動揺する私を見られたくなかった。

 “サラ”って、誰?

 いつもは働いてくれない私の頭が勝手に造り上げる女性の姿。毎朝、ケイのお弁当を作り、朝食を共にし、寝起きのままの跳ねた髪を優しそうに、愛しそうに笑って撫でる、ナイスボディな金髪美女。

 ……いや、誰だよコレ。

 突飛な想像し過ぎたな、と冷静になって呆れる。

 でも、ケイが自分の母親のことを名前呼びする……感じには見えない気がする。それに、サラっていかにも外国の名前だし。もしかして、ハーフなのかな。一体、ケイって……?

「ケイって、弁当作ってくれるような外国人の……その、ガールフレンド? がいるのか?」

 顔を上げたら私と同じ、当惑した微妙な面持ちのリョウスケが、忙しなく瞬きをして問いかけていた。

 ちら、と一瞬目が合う。

 私とリョウスケは、その一瞬で互いが思っていることが同じであることを共有し、それをケイに悟られないように顔をそらす。あくまでも、そう、自然に。