向かいに座るリョウスケのゴクリと唾を飲む音が雨に紛れて聞こえた。照り焼きは私の弁当箱の中で静かに輝いていた。
私達しかいない東屋に沈黙が訪れる。
そして……
ぷっ、という吹き出した声がした後、滅多に聞けないケイの笑い声が響いていた。それも、お腹から出したような笑い声。
突然の豹変に呆然とする私とリョウスケ。彼は治まらない笑いに、とうとう頭を抱え出す。
「ケイが、こんな風に笑ってるとこ初めて見た」
リョウスケが目をぱちくりさせてケイを凝視する。私は両手でがっしりと掴んだ弁当箱の中の照り焼きとケイとを見て、笑われた恥ずかしさに顔が火照ってきた。
「ハスミ……食べたいなら、どうぞ?」
幾分か落ち着いたケイ(まだ若干笑っている)に言われて、ますます恥ずかしくなる。
あんまり美味しそうだから、ケイが照り焼きを取ろうとする度、弁当箱を自分の方に引っ込めたのだ。
我ながら、なんと食い意地のはった女なのかと思うが「では、遠慮なく!」半笑いのケイを横目に照り焼きを口に運ぶ。
……冷めてるのに柔らかい鶏肉と、噛むごとに溢れる旨味。甘辛いタレがよく馴染んでいて、だけど、しつこくなくて、あっさりしてる。
こ、これはっ……!


