リョウスケの携帯のフォルダはほとんどが七奈美ちゃんの写真で、どれだけ妹思いなのかそれだけでも分かる。
しかも、その一つ一つの思い出を語る彼の表情がすごく優しくて、私まで優しくなったような気がしてくる。
「リョウスケみたいなお兄ちゃんが、私にもいたら良かったのになぁ」
両親に不満があるわけでもないけど、兄弟という存在が羨ましい。親ではない、身近な家族がいればな、と。
「いや……俺は頼りない兄ちゃんだけどな」
困ったような、照れ笑いを浮かべるリョウスケ。その時、偶然スクロールして出た写真は七奈美ちゃんを肩車したリョウスケが写っていた。
「そんなことないんじゃない? こんなに楽しそうに七奈美ちゃん、笑ってるんだから」
「……だと、良いな」
リョウスケはどうしても恥ずかしいようで、肩をすくめて携帯をポケットに仕舞い、大きな口でコロッケパンにかぶり付く。
ほっこりした気持ちで、私も手元の弁当に目を落として……そこで、異変に気付いた。
「うわ! 何か減ってる!?」
まだ手をつけていなかったアスパラベーコン巻きが、綺麗になくなっている!
隣から不自然に伸ばされていた黒色の箸を持った犯人を、ギロリと睨む。が、まったくもって反省していないヘラヘラ笑いに、怒りのボルテージが上がる。


