彼女曰く、彼らは限りなくリアルな王子様で、限りなく空想的な存在だそうだ。

 分かるような、分からないような。

 何はともあれ、私はハルちゃんが羨ましい。

 好きな人がいて、好きなアイドルにも夢中で、すごく楽しそう。

 そんなことを考えていると自然に出てくるのはため息で、さらに気持ちが沈む。

 この気持ちが晴れる、何か楽しいことが起こらないかな。例えば……

「ハスミ」

 呼ばれた反射で顔を向けると、ケイがそこに立っていた。

「クラス、間違えてるよ」

「ううん。ハスミに会いに来た」

 私は別に……と思うけど、彼が勝手に椅子を寄せてきてそこに座ったから、追い出すことを諦めて顔を背ける。

「ハスミ」

 最近、ことあるごとに姿を現すケイ。私がどれだけ冷たくしても懲りないなんて、神経の図太い奴だ。

「ハスミ?」

 ケイは不思議だ。今まで知り合ったどの人のタイプとも違う。