「……何とも思ってない!」

 肯定するのが嫌で、ついムキになって言ってしまった。そして、それを後悔する。

 宮永慧が薄い唇をきゅっと引き結んで黙った。

「あ……ごめん」

 その予想外の反応に困惑して言葉を詰まらせていれば、身長の高い彼が背中を丸めて伏し目になり、とうとう私が悪者だ。

「……ケイ、ごめん、言い過ぎた」

 あんまり落ち込んだ様子を見せるから、さすがに良心が痛んで、気を遣わざるおえない。自分のこういう子供っぽさに反省さえしていたのだが……

「ハスミに名前呼ばれた!」

 まんまと良心を利用された訳である。

 もはや、ため息しか出ない。膝を床に着け、机に腕を置いて私を見上げるケイは、すっかりご機嫌な様子だ。

「もう一回呼んで」

「ミ、ヤ、ナ、ガ、ケ、イ」

「ロボットの真似? 可愛い」

 わざと聞こえるように舌打ちする。

「舌鳴らす音ってえろいよね」

 この変人め。地獄で舌切られてしまえ。